うたかた日記

ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとどまりたるためしなし  鴨長明『方丈記』

『三体』劉慈欣

「たいへん長らくお待たせしました。現代SFの歴史を大きく塗り変えた〜」で始まる訳者あとがきにビビり半分、苦笑半分で読み始めた『三体』。そのあとがきでは数多の大御所作家を引き合いに出していたけど、個人的には中国版Xファイル?→中国版エヴァンゲリオン?→中国版ガンダム00?という印象を受けつつ読了。もちろん物理学、天文学、機械工学等の専門知識、世界史や宗教史の造詣も深くて素人なりに興味深かった。専門知識のある研究者に聞くと「前半は面白かったけど後半は反則が多すぎ」らしい。とはいえ、久々に正統派SFを読んだ気がする。それ以上に作者の日本サブカルおたく臭がプンプンする。

それより、同じ漢字文化圏の翻訳というのは訳す者と読む者にとても有利なのだと実感した。「神」と「天帝」の差違を感じ、アミニズム文化になじみ、漢字一文字に内包される意味をDNAレベルで読み取れることの優位性。

だからというわけでもないけど、マイクロ知性の名前が「智子(ソフォン)」なのに笑った。うん、多分「ソフォン>ソフィア>叡智>智子」なんだろう。世の智子さんは欧米のグリーンカードを取得するとき「ソフィア」を名乗ると良いですよ。